耳鳴外来

耳鳴について

耳鳴とは、外部の音がないのに音の知覚を生じる現象です。耳鳴の有病率は、5%から20%で、高齢になるにつれて増加する傾向があり、多くの方が耳鳴で苦しんでおられることが分かります。耳鳴は、言葉が聞き取り辛い、睡眠障害、いらいら、集中力低下、抑うつ、不安などの多彩な症状を引き起こし、生活の質を大きく損ないます。また、耳鳴のある人の80%に難聴を認めますが、難聴のある方の50%は、耳鳴を自覚されていません。

耳鳴の検査・評価

当院では、初めに、耳鳴の原因となる疾患の検索を行います。通常の聴覚検査を行い、その後、検査結果・症状により、バランステスト(ABLB テスト)、SISIテストのような補充現象(リクルートメント現象)の検査を行います。また、脳神経疾患が疑われる場合は、CTやMRIなどの画像検査を行います。これらの検査により、原因疾患が同定出来た場合は、原因疾患の治療に努めます。原因疾患が不明、または治療が困難な場合は、耳鳴という症状そのものの治療に移ります。まず、耳鳴検査にて耳鳴の評価を行います。耳鳴検査には、ピッチマッチ検査、ラウドネス・バランス検査、遮蔽検査、Residual inhibition検査などがあり、この中から必要な検査を行います。
次に、THI(Tinnitus Handicap Inventory)を利用して、耳鳴の心理的苦痛や生活障害の程度を調べます。

耳鳴の治療

一般に耳鳴の治療には、薬物療法、音響療法、TRT(tinnitus retraining therapy), 心理療法があります。中でも、TRTを重視しております。TRTにおいては、耳鳴治療の目標は、耳鳴の消失ではなく、耳鳴に注意を向けなくなり、耳鳴が意識されなくなる(耳鳴への馴化と呼ばれます)ことです。具体的には、先ずカウンセリングにより、耳鳴が悪化し、苦痛の原因となる機序をご説明します。その際、耳鳴に関する疑問や不安の解消に努めます。その後に、音響療法を行います。音響療法の役割は、雑音などの外部音を聞くことで、耳鳴が知覚されることを妨害し、耳鳴のコントラストを弱め、馴化を促進することです。外部音源としては、ラジオの局間ノイズ、自然環境音のCDが容易ですが、耳鳴や難聴の程度により、補聴器やサウンドジェネレーター(SG)、SG付補聴器などの医療機器を使用する場合もあります。治療期間は3カ月から1、2年程度です。耳鳴でお悩みの方はお気軽にご相談ください。